- 広報
コロナが第5類に移行し、施設にも比較的訪問しやすくなりましたので久しぶりの広報ブログです。
復活第一回目の今回は、サンライズにおいて行われている「ノーリフティング」の取り組みについて取材をしました!
サンライズは兵庫県が推進している「持ち上げない介護推進プロジェクト」に参加し、令和元年から「ひょうごノーリフティングケアモデル施設」としての認定を受けています。
従来介護ケアは「人の手が何よりも大切だ」と考えられてきましたが、ノーリフティングケアでは原点に立ち返り、利用者様と、介護者である職員にとって安心な介護は何かを考える姿勢を重要視しています。「利用者様・職員の双方に負担のない介護」を実現し介護サービスを継続していくためには、介護者の身体にも負担の少ない統一された介助方法を習得すること、介護環境を整備すること、介護ロボットを正しく活用することが有効です。
導入機器や概要については<福祉×先進技術>で紹介しています。今回は、働く職員目線に焦点を絞り、座談会形式でお話を伺いました。
Mさん「まず、腰痛ですね。ノーリフティングの動きの初期に、現状把握のための職員アンケートを実施するのですが、腰痛があると答えた職員が最初は70%、翌年に30%、その翌年40%(2022年)という回答になりました。活動をするうちに『これは腰痛かもしれない』って自覚した職員がいるのかな?と思うのですけど、総合的に言えば数字はかなり良くなっているので、職員の業務場面での負担軽減ができたと思うんですよね」
Mさん「それぞれの介助業務の大変さを4段階で評価してもらって、一番重かったのはお風呂でした。お風呂は①着脱(服の脱ぎ着)、②洗い場の椅子へ行くための椅子の移乗、③お風呂へ入浴するときと重い介助が続くのですが、それを今まではパワーでやるしかなかったんです。
特に寝たきりの方にお風呂に入っていただくというのがとにかく大変でしたが、ストレッチャー浴(写真)を導入して変わりました。ベッドからストレッチャー風呂に移乗するので、立ち上がって服を脱いでいただくとかが激減し、洗うときもすでに浴槽にいる状態なので体を動かさなくていいんですよね。
介助する側としては、持ち上げたり抱え上げたりが大きく減ったかなと思います。」
Mさん「ほかにも、自分で立ち上がれる方は浴槽に手すりやバスグリップをつけることで入りやすくなりました。でも、介護度が重度と軽度の間のお身体の状態の方がお風呂へ入るときに、もっと補助できるものがあればいいなと思います。そこを今はテクニックでカバーしています。
テクニックについては、ノーリフティングの指針に沿って、リハ職(理学療法士・作業療法士)が個々の利用者様の能力を確認したうえで、適した介助方法を介護職員へ伝えています。これはほかの特別養護老人ホーム等にはない動きだと思っています。」
しかし、かといって『介助が大変な人はみんなストレッチャー』にというのは過保護かなと思います。ノーリフトは利用者さんの状態を見極め、介護者の身体的負担の軽減も狙いつつ、ちょうどいいところを目指して介護を行うという戦いです。
環境整備・テクニック・機械の活用…それらを明確に分けてチャレンジしています。
Oさん「サンライズはMさんを主体としてすごくやってくれていたのでありがたかったです。
介護の現場は正直なところ、人力ですべてこなしていたら職員の身体への負担は大きいです。腰痛をはじめ腕や足など、介助のために全身を使っているので。なかなか全部の痛みを取り除くというのは難しいですが、そういうのを少しでも減らせるようにやっていこうと取り組んでいるのがサンライズの精神ですね。」
Oさん「泡シャンプー(写真)ですね。利用者様の身体洗いって介助的には本当に大変なんですよ。
泡シャワーの導入時は『もっと洗ってくれ』と仰る利用者様もいましたが、洗いすぎても皮膚によくないので、初めにしっかりご説明をして分かっていただいて、使用しています。今は泡による保湿効果も感じていただけたのか、満足していただいている様子です。
介助する側も、身体は泡シャワーに任せられるなど、介助負担が大きく減りました。」
サンライズの場合、職員1名が入浴介助する人数は1日20名が限度です。めちゃめちゃ体力がいることなので、どうやってその労力を減らしていくかが大事なところですね。
お風呂は着替え担当・身体洗い担当・浴槽に浸かってもらう担当で分担しています。その担当ごとにいろんな課題はあるんですけど、たとえば着脱のところはずっとかがんだままで利用者様の服を脱がせるので、やっぱりそういうのは腰によくないですね。かがんだり体をねじったり、ひざとか腰とか痛みが出やすい。今後改善していきたいと思います。
以前の入浴介助は重度の方を2人がかりで浴槽に入れていました。すると利用者さんも抱えられることに不安や怖さを感じられたり、職員たちも裸の人を抱えるのは滑りやすいので、単に体に負担がかかる意味以外にも、気持ち的に怖い面が大きかったです。
ノーリフティングの考えと対応した機器が導入されてからは、そういう面で気持ちにとても余裕ができました。気を付けていても起こってしまう皮膚の剥離や内出血などがだいぶ無くなり、心が軽くなりました。
確かに、毎年とっている職場アンケートで「辛いと思う介護がない」という回答が去年初めて出てきました。安心が提供できているっていうのはうれしい成果ですね。
そうですね。ストレッチャー浴だとそこで寝てもらっている状態なので、しっかりお身体(皮膚)の状態を観察できるようになったと思います。これもよかったことです。
泡シャンプーどうですか?
いいと思います!
めちゃよくなっていると思いますね、頭を洗っている間に利用者様に『体こすってね~』と言ってこすってもらうだけで、十分汚れが取れていくんで。それに泡シャワー後はお身体がつやつやになるので、お風呂上りに保湿クリームを塗って…みたいなことも全然いらなくなりました。今までは塗った方がよかった状態の方も、塗らなくて大丈夫みたいな。
それすごいですね
シャワーで身体洗いが早く終わったら、お風呂へ浸かれる時間が長くなったりしますね。業務効率が上がるのと、清潔の保持の両方で効果が上がったと思っています。
Yさん「お風呂以外だとリフト(写真:床走行リフト)ですね。リフトの評判を聞き、実際に自分も乗ってみたところ、気持ちいいなと思いました。これだったら利用者さんも苦痛な思いをせずベッドなどから移乗できるなと。実際にうまくいきましたね。今まで職員2人で行っていた移乗が1人でも大丈夫なようになって、業務効率も上がりました。」
気を付けていても移乗中のハプニングもあるので。そういうところがなくなりましたしね。そういうのが私はすごく大きいです。
せっかく介助しているのに傷つけてしまうっていうのは、介助する側も辛いよね。ケガをされたらご家族へ報告する必要がありますし。
でもその報告もかなり減りましたね。リフトでの事故(皮膚の剥離など)はなかったと思います。
腕で抱えて勢いで移乗していると、その途中で別のものにぶつかってしまうとか起こってしまっていました。でもリフトを使ってからは大きな事故は発生していません。
以前、立ち上がるのが難しく、トイレも2人介助で抱えていた利用者様がいました。本人も姿勢維持が苦しそうで、限界じゃないかとなった時にスタンディングリフト(写真)を使ってみたら、すんなり立つことができて。後ろを支える必要があるんですけど、ご本人も介助する側も、身体的な負担がとても楽になりました。
入職の時に説明していますね。機械どうこうではなく、『利用者様も介護する側もお互いしんどくない、利用者さんがちゃんと頑張れる介護をしよう』と伝えています。中途の方にも、これまでその方がされてきた介護を否定はしません。ただ、これからの社会の仕組みに立ち向かうために一緒に頑張ってみませんかと話しています。
まだサンライズ内にも従来の介護にこだわる方もいますが、Yさん・Aさんのように現場で理解してくれる方がいるので比較的みんな取り組んでくれてますね。
僕も以前は『できるから』と、ノーリフトについて受け入れがたく思っていました。しかしそうやって頑張って働いた結果、将来身体を痛めて働けなくなったらどうするかを考えました。そして、ノーリフトというものがあるんだから、それを活かして少しでも長く介護ができる方法に切り替えようと考えが変わりました。
車いすも、高い・低い・首がリクライニングできる・首も足元もリクライニングできるなど多種多様な種類をそろえたとのことです(写真:
ポータブル手すりと全リクライニング車いす)。
Mさん主導の上、数々の機器を補助金を上手に活用し導入したとのことですが、その原点にはノーリフティングの「ただ機械を導入するのではなく、導入前の現状把握や準備が大事であり、職員や利用者にとって有益なことへつなげる」という考え方があります。熱意あるリーダーのもとで、サンライズは正職員からパートナー職員まで一体となり新しい取り組みにチャレンジしている様子でした。
外部セミナーでの講演(写真)や、取材の申し受け、同業者の施設見学申し込みを受けるなど、その取り組みは外部からも評価を受けています。
日の出医療福祉グループでは来る「働き手不足」に備え、労働環境改善・業務効率化を目指した「ICT・AI・介護ロボット導入」を推進し、国や県が推奨している介護の現場への先進技術の導入について意欲的に研究しています。
今後はサンライズを見本とし、各施設での動きを活発化するよう勧めていこうとしています。
これからも追って取材してまいります。