- SDGs
SDGsで提唱されている17のゴールに、「働きがいも経済成長も」「人や国の不平等をなくそう」という2つの目標があります。少子高齢化で労働力が減少している日本において、企業が持続的に成長していくためには障がいのある方を含めた多様な人が活躍できる環境作りや風土改革が重要となります。また、障がい者雇用をするにあたっては事業に持続的に貢献できる業務や仕事を見出し、障がいのある方・ない方それぞれの役割を考えていくと双方にとっていい結果が得られるでしょう。
日の出医療福祉グループでは障がい者雇用枠を設け、現在グループ全体で50名の方が就労しており、雇用の創出、定着にあたっては労務部 雇用定着課が主体となって動いています。
今回は特別養護老人ホーム稲美苑での「障がい者雇用の取り組み」についてご紹介します。
左から稲美苑 中野施設長・稲谷さん・菰口さん(現在は他法人に出向中)・雇用定着課 高橋さん
すごい集中力で、力を発揮してくれています。お願いしている業務は介護の周辺業務なのですが、それに真剣に取り組んでくれるので、介護職が介護業務に集中できてとても助かっています。
周辺業務って、介護業務でバタバタしているとなかなか時間が割けない部分があって。
今までは自分たちでもしていたのですが、両方を介護職がこなすのは大変でした。そこを任せられるっていうのは、本当にすごく大きいです。
稲美苑でシーツ交換を担当しているTさんについてお話したいと思います。
Tさんは2020年に入職し、週に5日、1日6時間勤務しています。コミュニケーションと臨機応変に動くことが難しいという特性がありますが、原状復帰が正確にできるということで、稲美苑ではシーツ交換業務およびベッド周辺の環境整備を担っています。
稲美苑ではTさんの雇用に当たり、まずは相談窓口を一人に絞り、業務指示や困ったときはなんでもその人に聞くという体制を用意しました。最初はぎこちなかったですが、次第にいい関係を築くことができました。また、周りの職員も段々と声をかけるようになり、それに応えてよく笑ったり、雑談もできるようになってくるなど、大きな変化がありました。
シーツ交換自体は、きれいに最初からできていました。ただベッドによっては物が多かったりと、バリエーションが増えると困ってしまう様子がありました。
出勤したらすぐにシーツ交換ができるように前日に次の日の準備をしておいたり、移動時間が短くできるようどの部屋から順番にしていくかをTさん自身が考えました。
それと特製のカートを用意しました。交換するシーツと掃除用具がTさんが使いやすいように載るよう加工したカートです。何度も用具を取りに往復する必要がなくなり、またTさんが使いたい場面で取り出しやすいように、相談しながら一緒に作ったので、これの導入によりかなり作業効率がアップしたと思います
Tさんは、今では一日最大13床のリネン交換と環境整備を行っています。シーツ交換の仕上がりが素晴らしいことはもちろんですが、環境整備もしっかりしてくれるというのが助かります。ベッド自体の掃除に加えて、床もきれいに掃除をしてくれるので、今までよりも部屋の環境がずっとよくなりました。
利用者様も『Tさんにシーツ交換してもらった後はぴしっとしていて気持ちいい』とおっしゃっていたり、本人に『ありがとうね』と声をかけてくれています。それがTさんの励みにもなったのではと思います。
障害のある方が就労継続支援事業所に所属している場合、その担当職員の方とはかなり連携します。特性により、思っていることを口に出せない方がいますので、その思いを聞き取るという面では非常に助けられました。こちらの指示の出し方や業務内容の調整への提案はもちろん、ご本人へのアドバイスなども行っていただきましたね。
施設と本人間で円滑なコミュニケーションが取れるよう、重要な橋渡しをしてもらっています。相談すると的確に答えていただけるので、こちらも安心できました。
私たちは障がいをお持ちの方がグループ内で生きがいを感じながら働いていただけるよう動いています。
ご本人に対しては、長く安定した勤務ができるように支援者との情報共有や、本人の気持ちや希望、状況を把握したうえで事業所との業務内容・時間の調整といったサポートを行っています。また、プライベートでの悩みがある場合には関係機関(障がい者基幹センター、障害者就業・生活支援センターなど)に相談し、サポートを依頼しています。
受け入れ側となる事業所側に対してもその負担と不安を軽減できるように、私たちへ希望するサポートの聞き取りを行い、実行しています。
雇用定着課からは外部支援の方とは別に、施設からも一歩引いた客観的なアドバイスがもらえています。また働いている様子を見に来て、ご本人とのコミュニケーションを取ってくれています。
ご本人が現場にいるとき以外の場面でのフォローもしてくださっていますね。
はい。
稲美苑では月に1回、障がいをお持ちのご本人と外部支援者、施設の職員、障害者雇用担当のメンバーで、『ふりかえり』を行っています。ふりかえりではご本人が就労移行支援事業所にいたころの様子や、できること、苦手なことを教えてもらったり、今の業務に関して悩んでいることや困っていることの相談や共有をしています。ふりかえりは、障がいのある方が働きやすい職場を作っていけるようにという目的で開催しています。
そこで情報や思いを共有して、より良い形に持って行く努力をしています。
本当に貴重な存在で、障害者雇用の方たちがいるから私たちの仕事が成り立っている部分がすごくありますね。
稲美苑の中での大事な存在として働いてもらっていて、障害があってもなくても欠かせない存在だなと思うので本当にありがたく思っています。だからこそ今後も、ご本人が働きやすく、働き続けたいって思える環境や、職員との関係性を築いていきたいと思います。
将来的に、今行っている業務の幅を少しずつ広げて、それぞれの方ができることが増えていくともっといいなと思います。また今後も、雇用の拡大を進めていけたらと思います。
稲美苑の皆さん、貴重なお話をありがとうございました!
最後に、雇用定着課の高橋さんよりメッセージをいただきました。
日の出医療福祉グループは介護・医療・保育の専門職種の集まりです。専門職種の集まりだからこそ、『専門以外』の業務において人手を必要としています。その部分において障がい者雇用枠の創出をしたいと考えています。
しかし、障害者を雇用するにあたってはやはり職員はすごく大きな不安があると思います。そこに私たち雇用定着課や外部の支援機関といった障がい者雇用の専門職種が間に入って、一緒に協力しながら支援していくつもりです。