- SDGs
SDGsで提唱されている17のゴールに、「ジェンダー平等」があります。ジェンダーとは性別によって定められた社会的属性や相互関係を意味し、「経済」「健康」「教育」「政治」における4分野において、各国の男女格差や不平等が「ジェンダーギャップ指数(※世界経済フォーラムが2006年以降毎年発表)」として示されています。
企業活動におけるジェンダー平等とは、「政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。」とされています。
日の出医療福祉グループでは女性役職者が全体の55%(※2021年時点)であり、主には介護事業所の管理者として働いています。今回は兵庫県加古川市内にある介護事業所の女性管理者にお話を伺い、その働き方や課題について聞き取りました。
デイサービスセンターおひさま 池間さん(理学療法士/2017年11月入職)
ゆとり庵石守 山﨑さん(看護師/2012年4月入職)
それいゆ訪問看護加古川サテライト 岩木さん(看護師/2019年4月入職)
ゆとり庵尾上 少人数個別デイサービス 巽さん(介護福祉士/2002年3月入職)
ゆとり庵尾上 小規模多機能型居宅介護 片島さん(介護福祉士/2014年4月入職)
SDGsプロジェクトリーダー 小森雅士さん
(経歴)作業療法士として入職後、小規模多機能事業所の管理者、加古川エリア等のエリア長に就き、姫路統括エリア責任者として現在に至る。
皆さん加古川エリアの各事業所にて管理者として活躍いただいています。このインタビューを一般職員の方に見ていただいたときに、日々の苦労や苦悩はある中でもやりがいのある大切な役割とわかってもらえたらと思っています。
また、現職の女性管理者の方や未来の女性管理者の方にとって、一意見として参考になればと思います。
本日は、管理者に至るまでの経緯、女性管理者ならではの経験や苦悩、ライフワークバランスを保つための工夫、女性が活躍できる法人を目指してといったテーマで進めていきます。
今回集まっていただいた皆さんは中途採用で入った方、新卒で入職されて今まで在籍している方とバラバラですね。入職からたどって、どのような経緯で管理者になりましたか?
私は26歳で専門学校に入り、その後32歳で新卒として日の出医療福祉グループに入職しました。学校に通っているときに小規模多機能型居宅介護に実習に行き、このサービスがとてもいいと思ったので、ちょうどその時開設準備をしていた小規模多機能型居宅介護 ゆとり庵別府(※現在は看護小規模多機能型居宅介護事業所)の話を聞き、採用後はそこに配属されました。
その後ゆとり庵尾上に異動したとき副主任の役職がついて、管理者になったのは2021年1月です。断る理由も見当たらなかったので受けました。
私は看護学校を卒業した後、県立病院で勤務しました。家族の看取りを経験して、もともとあった「訪問看護がしたい」という気持ちが育ち、日の出医療福祉グループに知り合いがいたこともあり関心を持ちました。グループがちょうど訪問看護ステーションを立ち上げようとしていて、そこへ管理者として2012年4月に入職することになりました。
昨今は男女平等やLGBTQ等の言葉を耳にすることが増えています。大きな変化として男性も育休を取ることが推奨される時代になってきました。僕も1年取得しています。しかし5~10年前は今とはまた違った空気感だったと思います。出産や子育てのようなライフイベントと、仕事の連なりについてお聞きしてもいいですか?
私は新卒で入職して12~3年経ったころに出産を経験しました。役職もついていたのですが「もとの職場で同じ役割を果たすのは難しい」と、一般職で育休明けは復帰したいと上長に相談しました。でも人手が足りなかったので1歳半の子どもがいる中、夜勤にも入りつつ働いてましたね。
1年半後くらいに2人目ができたときも育休を取得して、復帰後は2か月間時短勤務をし、仕事量の多さからフルタイム勤務に戻りました。数年後に管理者を打診されましたが、その時は子どもが小さかったので辞退しました。
2021年にまた打診されて、スタッフに「巽さんが管理者をするなら私も頑張りたい」と言われて、「じゃあ…」と管理者になりました。
私は3人子どもがいて、最後の子どもが小学生に上がる前に、それまでできていなかった「いってらっしゃい」が言えるようになりたいと思い、家に近い介護事業所を運営していた日の出医療福祉グループに入職しました。
今はデイサービスセンターで管理者をしているのですが、中学校になった子どもが野球のクラブチームに入り、土日はその遠征サポートがあるためです。上長に「3年間だけ何とか日勤だけの事業所に…!」とお願いをして、異動が叶ったような形です。
私の場合はグループに中途入職したときに子どもたちは小学校・中学校だったので、ご飯は休日や平日夜に帰ってから一気に作っておき、「自分のことは自分でやってな」と任せていました。そうしたら嫌いなものを食べてなかったり…。
子どもへの愛情は常日頃注ぐのが難しい分、休みの間にしっかり注いで、今のところグレずに育っています。わかってもらうように説明とか、努力をして、寂しい思いをさせたけど、理解を得ているところです。
管理者として入職して、その後出産、育休を取った後、また管理者として復帰して思うことは…「管理者をせずに家庭に振り切るって選択肢もあったかな」、と。その選択は今でも考えることがあります。今子どもは小学校2年生で、「行ってらっしゃい」は言えるけど「おかえり」って声掛けとか、宿題を見てあげるとかできてないですね。
母が近所に住んでいて助けてくれている今は、とにかく走り続けるしかないと思ってますけど。
これは男女関係ないですけど、子どもと遊びに出かけている時に社用携帯が鳴っただけで子どもが「ママ仕事なの~~~」と言ってきます。それに身内以外から「仕事ばっかりして」というお声をいただいたりもしますね…。
どうしても管理者しかできない業務があるから、子どもが入院した時や学校行事の時に休めないこともあります。
一般職の方が、子どもや家族と仕事の両立した生活の実現には近づきやすいという感じでしょうか?
一般職であれば、働きやすい環境だと思います。時短勤務や、いろんな勤務形態で働けるようになっていますし。パートさんもいろんな時間帯で働けるようになってます。
職場において男女の差はないですけど、家庭との両立という面では女性の方が大変、と思います。家庭内の仕事はやっぱり圧倒的に女性の方が多いですから…そこを考えて仕事とのバランスを取って理想を叶えるのは難しいかなと。なので私は子どもたちに「仕事あっての楽しいことよ」って話しています。
家族みんなディズニーが好きで毎年行っているのですが、「日頃仕事を頑張っているからなんだよ」って話してます。それで私は家庭と仕事のバランスはとってるかもしれないですね。
加古川エリアは特に、管理者の男女比が半々くらいで、他エリアよりも女性管理者が多い印象です。各々提供しているサービスは違う中で、普段気を付けていることなどの”働き方”を教えてください。
私は売り上げなどといった数字管理があんまり得意じゃないので、昔は想像もしてなかったところに来てしまったという気持ちはします。
でも、ゆとり庵尾上では初めての女性管理者となってみて、やっぱり介護事業所は女性職員が多いので「女性の管理者だからこそ言える話」とか、「同性だから理解をしてくれるかもしれない」と期待している職員の存在は感じ取ってますし、そこに女性管理者がいる意味っていうのはあるのかなって思って働いていますね。
私は職員の勤務希望は叶えられるようにしています。その代わりに、空いたところは「お互い様やからみんなで協力して埋めようね」って。「お互い様だからサポートし合おう」っていう雰囲気を作るのが大事かなと思います。
それには利用者さんやそのご家族との信頼関係も大事だと思っています。普通のお休みはさておき、例えば男性の育休ってスタッフ的には「取ったらいいと思う」ものでも、利用者さん側にとっては理解しがたいものだったりします。そこを埋めるというか、わかってもらうための日頃の関係づくりや、引継ぎのための準備が大事だと思いますね。
日の出医療福祉グループで今後職員が長く働き、キャリアアップもしていくために「こんな仕組みがあったら」と思うものを自由にお話してください。
どうしても子育て中の方は子どもの学校行事とかイベントが多いから、常に希望休が叶えられる体制にどこの事業所もなったらいいですよね。独身の職員、ご夫婦のみの職員、子育て中の職員、子育てが終了して時間調整しやすい職員等、様々な年代の職員が協力して働ける事業所がありがたいです。
それと小学校くらいまでの子どもを見てくれる託児所がエリアに一つとかあったらいいのにと思います。子連れ勤務したとしても、いてもらう場所は施設内の一部屋を使ったりして居場所としては狭いし…。
そこに保育士さんがいたらすごくありがたいですよね。子どもがいないときは介護職も兼務したりとか…そういう人材が配置されたらすごく助かると思います。今は就業時間+1時間残業したら学童に迎えに行ってと、タイムアタックしているような状況ですし。イレギュラーが起きたら迎えに行ってから職場に戻ったりしています。
管理者はそういう、自分の就業時間以外のイレギュラーへの対応が必要になるから、あれでプライベートが削られますよね。
管理者の代わりにもなれる役職みたいな人、不在にしたら代わりに判断できる人がいたらいいのにって思います。あと妊娠がわかった職員さんは、正職でもオンコール(※)から外すとか。現場は大変になりますけど、お子さんに何かあったら怖いので。
(※オンコール:緊急を要する際にすぐに対応できるよう待機、または対応すること)
オンコールは、できれば小学校に上がるまでの間は正職でも無しだったらいいと思います。それで訪問看護の仕事を離れちゃう場合もありましたしね。
ありがとうございます。
管理者や事務職といった、少人数かつ専属業務に就いていただいている方の業務や働き方の課題はあると感じます。急な病欠や中長期のお休みなどの場合のフォローができる体制の構築が必要と感じます。また、管理者等の業務時間外の対応に関しては、緊急時の対応フローなど、管理者が不在の場合でも対応ができる体制の構築も大切かと思います。管理者の業務時間外対応は男女問わず課題なので、検討を続けていかなければと思いました。
いなみ虹保育園においては、病後児保育も行っているので、利用している職員は助かっていると思います。妊娠している職員への対応ルールについてはグループでも規定がありますので、それを周知したうえで各事業所でどうするのかを判断してもらうのが大事ですね。
日の出医療福祉グループでの管理者の仕事の、楽しさ、やりがいを教えてください。
入職と同時に管理者となり、法人初の訪問看護の立ち上げのため手探り状態でいろいろ苦労はありましたが、良い上司や同僚に恵まれ、私のやりたいことをやらせてもらえました。8年間立ち上げから関わった訪問看護が、今では市内最大級の機能強化型訪問看護ステーションとなったことは私の自信にも繋がっています。
現在は看多機の管理者として、また目指す看多機像を実現させるために日々邁進しています。
ゆとり庵は小規模施設であることから一人ひとりを把握しやすい環境です。利用者様・職員と密に関わりを持つことができ、困りごとや課題について一緒に取り組んでいけるところにやりがいを感じます。また、課題や解決の方向性について進捗状況を個々が身近に感じて、共有できることが楽しさに繋がっています。
管理職としての「やりがい」は、職場の雰囲気が利用者様へのサービスに直接影響する点にあります。自分から明るく接することで、職場全体が活気づき、看護やケアの質向上につながっています。コミュニケーションを大切にし、問題を共有し合うことで、互いに助け合う環境を作るとともに信頼関係を築いています。また、ネガティブな態度は雰囲気を悪化させるため、前向きに改善策を考えています。事業所運営は、上司やスタッフとの信頼関係が基盤にあってこそ築いていけると思います。
日々勉強と、取り組んでいます。ただ、加古川エリアは女性の管理者が多いので、困った時に相談がしやすいのがありがたいです。大変でも一緒に考えたり、その経験の話を共有してもらうだけで救いになったり。
それに、ついてきてくれる職員がいるというのもやはり、仕事に張りが出るというか、やりがいになるかなと。
小規模多機能や看護小規模多機能の事業所の管理職は業務が多岐に渡るため重圧も大きいですが、在宅で暮らす高齢者の方々やそのご家族のために、その生活を親身になって24時間365日支えているという使命感と達成感を味わうことができました。介護士や看護師と協力して自宅での最期を一緒にお看取りし、ご家族からありがとうと言っていただけたときは真のやりがいを感じました。
また、デイサービスではベテラン介護士さんに引っ張ってもらいながら、利用者様の楽しみや地域貢献とは何かを考えながら様々なことにチャレンジしていけることが楽しいです。
皆さんのお話を聞いていて、うれしいなと思ったのは
・日の出医療福祉グループは女性が働きにくい環境ではなく、男女で仕事上の隔たりは感じない。
・子育て世代が多いので理解してもらいやすく仕事がやりやすい。
・エリア長、統括にいつでも相談しやすいので行き詰まってしまうということはない。
ということでした。何より皆さん元気があって、パワフルにお話いただいたことはありがたかったです。
ただ、現場における休みの調整や管理者業務の煩雑さ、時間外対応についてなどの「男女関係ない管理者としての働き方の課題」と、子どもの居場所や家事との両立といった「職場での仕事と、女性が受け持つ家庭での仕事の課題」というところに難しさを感じました。
この度のディスカッションで分かった課題に対しては、現職や未来の管理者においても関心が高い内容だったのではないでしょうか。法人における、事業所体制の検討や、家庭両立に向けた施策を検討したいと思います。