- SDGs
SDGsで提唱されている17のゴールに、「ジェンダー平等を実現しよう」があります。これは特に女性や女の子に対するあらゆる差別を無くし、男性と女性の持つ権利が同じになるよう取り組む目標とされています。
日本においては仕事や子育て、家事、介護、政治参加等の場面で女性よりも男性が優遇されている側面が強いとされており、2023年の世界経済フォーラムで発表されたジェンダーギャップ指数では世界各国の中で125位という順位になりました(参考:NHK NEWS WEB)。
男性の育児休暇取得は、女性側に偏りがちな育児や家事の負担を夫婦で分かち合うとともに、女性の出産意欲や継続就業の促進、企業全体の働き方改革にもつながります。令和元年12月に閣議決定された「第2期『まち・ひと・しごと・創生総合戦略』」において、2025年までに男性育児休業取得率を30%にするという目標も明記されました。
現在までにグループ内で取得された男性の育児休暇は、累計で20件(取得人数17名)となっています。
今回は実際に2023年に約1年間育児休暇を取得した方へのインタビューをもとに「男性の育休取得への取り組み」についてご紹介します。
姫路統括エリア責任者・SDGsプロジェクトリーダー
小森雅士さん
(経歴)
2013年7月に日の出医療福祉グループへ作業療法士として入職。ゆとり庵事業の立ち上げに携わった後、ゆとり庵別府の管理者に。30歳で結婚後、加古川エリア エリア長、介護老人保健施設サンライズ 副施設長、稲美エリア エリア長に就き、2021年に長子誕生、同年に埼玉県へエリア長として単身赴任。
2023年1月~2023年11月に育休を取得。
SDGsプロジェクトメンバー
藤森和佐さん
(経歴)2009年4月入職、株式会社PRIME・医療法人社団 奉志会所属。2児の父。
2021年に埼玉へ異動した後、1年ちょっとで2人目の妊娠がわかったことがきっかけですね。上の子もその時1歳で小さかったですし、奥さん一人では大変だと…。でも単身赴任もまだ2年目に入るところで、私の性格上自分都合で関西に戻りたいとはなかなか言い出しにくいなぁと当時思ってました。
それで先輩に相談したところ、「育休とってみたら?」と勧められたんです。それで、初めて育休をとる方向で奥さんと相談してみることにしました。その後、直属の上司に育休取得についてや、期間等の相談に乗ってもらいました。
最初は6か月の取得を検討してましたが、実際に生まれてから6か月経ってみて、まだ仕事への復帰は難しいという状況でした。それで延長して、結局産後から含めて2023年1月~2023年11月のほぼ丸1年取った形になりました。法人ともすり合わせをして、そのように設定してもらえたという感じですね。
僕も二人子供がいますが、どっちの時も取らなかったですね…。奥さんにはそのことで今でも時々言われます…。
育児休暇を取るときに、抵抗みたいな気持ちはなかったですか?
日の出医療福祉グループで男性の育休取得者って、数多くいるわけじゃないと思うので。
日の出医療福祉グループの男性の育休取得は現在進行形も合わせて17名ですね。
抵抗というか、職場のみんなに申し訳ないっていう気持ちはありました。自分の後任になってくれる人や、部下たちに対しても。上司に対しても、長期的な休みをもらうっていうのは、申し訳ないっていう気持ちはありましたね。
でも相談した先輩が「ええねん、気にせんでも。これまでがんばって来とるんだから、家庭も大事にしてほしい」と言ってもらえたので、助かりました。
育休を取ることを決めた後、先輩との日常会話の中で「長い目で見たときに、育休期間にできる経験が減ってしまうのは怖くない?」と聞かれました。僕としては、その時はそういう怖さは感じてなかったですね。
置いてきぼりにされるみたいな怖さを僕なら感じそうと思います。
復帰した後に、仕事のやり方や人間関係、会社のルールなんかが変わってたらと考えたら不安になりそう。
僕の場合はですけど、月1~2回くらい会議には出ることにしてて。情報的に浦島太郎にならないかなと思っていたので、怖くはなかったかな。復帰した後に嫌なことが起きることはないだろうと、法人を信頼する気持ちが根っこにありましたしね。
ただ、キャリア面の不安というのは男女関係なく感じるんじゃないか、と育休を取ってみて気付きました。だから僕が相談を受けたときは、そういう面を理解したうえで声掛けとサポートをし、僕自身の恩返しがしていけたらと思っています。
奥さんと相談したうえで、上の子の送り迎え、洗濯、掃除、食事、お風呂等の家事全般を分け合って行っていました。一人暮らしの経験もあるので、家事・育児は負担に感じなかったですね。
ただ、夜泣きで寝れないときや、上の子のイヤイヤ期の関わりはやっぱり大変でした(笑)夫婦ともに睡眠不足でコンディションが悪いとイライラしちゃったり。でも、そういうことを具体的に口にしたり、自分だけ息抜きとか、時間つぶしとかはしないように心がけていました。2人目が10か月くらいになったら少し余裕が出てきたので、奥さんと代わりばんこに1日出かけたりしましたけど…1年間、家できちっと動かないといけないというのがしんどいと思う人は、しんどいと思いますね。
乳児に対して、『パパしかできないこと』ってないんですよね。だから、ママがミルクをあげてくれている間にあれをしようこれをしようって動かないといけませんよね。
そうそう。奥さんからは「サポートじゃない。育児は2人でするもの。」と教えてもらって。恩着せがましくならないように言葉も気を付けました。やり方とかタイミングとか、相手に対して僕たちそれぞれで気になるところはあっても、言わないようにしたり。
さすがと思います。
奥さんは育休取ったこと、喜んでくれましたか?
そうですね、「育児休暇を取ってよかったね」と言ってもらえましたし、2人で育児ができたんじゃないかなと感じています。
今は、育休中は僕に引っ付いてきてた上の子が、明けてから奥さんの方へ行くようになってしまってちょっと寂しいです(笑)
仕事の面では申し訳なさはあったものの、不安は特にありませんでした。
ただ、経済的な面で考えることはありましたね。
1年間夫婦で育休を取るから、収入が給与の6割分、後半は5割分の手当だけになるし、支給も2か月に1回だし。うちの場合は奥さんが貯めてくれていた貯金でやっていけたけど、丸1年取るっていうのは結構厳しいと思います。
先ほども言った通り、経済的な面で考える方も多いと思います。国の方針として育児手当の給付の引き上げも検討されていますので期待したいです。
でも、取りたいという子には取ってほしいと思います。少なくとも出産前後や奥さんの体調が回復してない時期は、産後パパ育休制度(※産後8週間以内に4週間(28日)を限度として、2回に分けて休暇が取得できる制度)を含めて検討してもいいんじゃないかと思います。
男性も、1週間や2週間の短期間でも育休を取ったらいいと思いますね。
現状、17名っていうのが日の出医療福祉グループの実績です。
どうやったら取りやすくなると思いますか?
子どもができて、育休を取りたいと思っているなら、予定日の3か月前くらいに上席者に話してくれたらと思います。
3か月前なら立ち合い等での休みの設定はもちろんですが、人員的なバックアップもしやすく、育休の調整もしやすいですね。
本人に育休を取るつもりがなくても、子供ができたことを話してくれていたら、上司の方から「育休についてどう考えてる?」とか声をかけやすいですね。それにはもちろん、言いやすい雰囲気や、上席者が育休を認識してることも必要ですけど。
僕なら聞いてみて「考えてない」っていう答えが返ってきても、奥さんに聞いてみるよう促したいですね。自分から言ってもらわないとわからないので、ぜひ相談してほしいと思います。
男性も、育休を取るのが普通で、相談して普通な状況にならないと、言い出すのは難しいのかもしれませんね。
そのためには相談を受ける管理者たちも、制度やグループ内での男性職員の育休取得事例を知っておいてほしいし、自分たちも積極的に取ってほしいなと思います。
昔よりは、取ろうと思っている人は増えてるんじゃないかと思いますけど…グループ内で育休を取ったという男性職員が増えていってほしいと思います。
データをまとめたものがこれなんですが、参考になれば。
ここまで、短期間の育休はぜひ取った方がいいと言ってきたんですけど、ただやっぱり安易に取れとは言えない面があります。
僕は、育児休暇は覚悟を持って取得してほしいです。
経済的な面もありますが、育児休暇の間の自分の役割や、取るまでにどんな準備をしないといけないか、職場だけではなく奥さんとのすり合わせが大事です。奥さんは期待してくれているので、それに応える準備をしてほしいです。
何をするために育児休暇を取るのかっていう目的意識を男性側が持たないとですよね。
そうそう。
仕事じゃないけど、仕事みたいに、やることと目的をきちんと固めて持っておかないとだめだと思います。
「育休を取ったから子供と一緒にいられる」というのが男性育休の一般イメージかもしれないけど、それよりもっと育児・家事に追われるので。家の用事ってやることが決まってるわけじゃないから、自分でやるべきことを見出したりとか、パートナーと相談したり、タスク整理したりとかできないと、本当にいい育児休暇が成立しないんじゃないかなと。
理想論は理想論として、ちゃんと心構えをして、取ってもらいたいと思います。
男性が育休を取って、奥さんが「よかった」と思ってくれたなら大成功ですよね。
そうですね!
今しかない子どもの成長やかわいい姿をリアルタイムに共有できたことがすごく嬉しかったです。
”2人で育てている”という気持ちが一層強くなりました。
育児休暇制度は、「子が1歳(一定の場合は、最長で2歳)に達するまで、申出により育児休業の取得が可能 」というものであり、育休の取得者を男女で指定してはいませんが、厚生労働省の調査によると2022(令和4)年度の育児休業(育休)取得率は女性が80.2%、男性が17.1%となっています。 男性の取得率は増加を続けていますが、女性に比べると依然低い割合となっています(引用:公益財団法人 生命保険文化センター)。
男女とも仕事と育児を両立できるように「産後パパ育休制度」や「育児休業の分割取得」などといった制度は整えられつつありますが、これまで女性側のキャリア面の不均等は見逃され続けてきました。育児休暇の取得を希望する声が上がった時、男女関わらず、そのキャリアへの不安を払拭できる体制や、必要とするサポートを用意するとともに、相談を受けた側が十分に案内できるだけの認識を育てなくてはいけないと感じました。